研究概要

RESEARCH 単細胞生物から多細胞生物への進化の鍵となった遺伝子の解明 II(幹細胞と非幹細胞を作り分ける分子機構)

(張列弛 院生、石川雅樹 助教)大学院生募集中

幹細胞は多細胞生物に存在し、自己複製する能力と分化する細胞を生み出す能力の両方を持った細胞です。単細胞生物の細胞は自己複製するとともに、生殖細胞に変化するので、幹細胞の祖先状態だと考えることができます。単細胞生物から多細胞生物が進化する段階で、幹細胞とそれ以外の細胞を作る仕組みができたということは、幹細胞以外の細胞を作る仕組みができたことだと考えられます。

レーザーで細胞を破壊し1細胞だけを残すと(上段)、その細胞が幹細胞化して伸び出す。一方、2細胞を残すと(下段)、どちらかの細胞だけが幹細胞化する。

(詳しい研究内容)

幹細胞は多細胞生物に存在し、自己複製する能力と分化する細胞を生み出す能力の両方を持った細胞です。単細胞生物の細胞は自己複製するとともに、生殖細胞に変化するので、幹細胞の祖先状態だと考えることができます。単細胞生物から多細胞生物が進化する段階で、幹細胞とそれ以外の細胞を作る仕組みができたということは、幹細胞以外の細胞を作り仕組みができたことだと考えられます。ERATOプロジェクトでグループリーダーだった佐藤良勝 君(現・名大特任講師)は、ヒメツリガネゴケ茎葉体の葉細胞を、レーザーによって1細胞だけ単離すると、原糸体頂端幹細胞に変化することを発見しました。ところが、予想外だったことに、隣り合った2細胞を単離すると、両方の細胞の核が大きくなり幹細胞化が進みますが、しばらくすると、一方の核は大きくなるのが止まってしまい、最終的に、片方の細胞だけが幹細胞になってしまったのです。このことから、幹細胞化途中の細胞は周りの細胞が幹細胞にならないように抑制しているのではないかと考えました(Sato et al. 2017)。そして、この仕組みは生物が単細胞から多細胞へと進化したときに使っていた仕組みかもしれません。中国から来た留学生の張列弛 君は石川雅樹 助教を中心とした研究室スタッフの支援のもと、この問題に興味を持って、抑制因子を特定しようと頑張っています。請うご期待。

Sato, Y., Sugimoto, N., Hirai, T., Imai, A., Kubo, M., Hiwatashi, Y., Nishiyama, T., and Hasebe, M. 2017.
Cells reprogramming to stem cells inhibit the reprogramming of adjacent cells in the moss Physcomitrella patens
Sci. Rep. 7:1909, doi:10.1038/s41598-017-01786-1